Vol.2 谷由美さん

(独)理化学研究所人事部人材開発課

「科学者の楽園」とも謳われる理化学研究所、通称「理研」。そこでは科学者だけでなく、彼らを支える人々もたくさん働いています。インタビュアーは修士課程時代、研修生として理研に在籍していました。ひょんなことから、男女共同参画の取り組みを進める谷さんと出会い、周りをぱっと明るくする笑顔と筋の通った考え方、テキパキと仕事をこなす姿にあっという間に魅せられてしまいました。科学者たちを支える事務方である谷さんが、何を考えて仕事をしているのか、どんな想いをもっているのか…ドキドキしながら訊ねてみました。

「わかめスープを作っているんだと思っていました」

― 谷さん、理研は何年目になるのですか?

理研に来たのは2003年。もう8年目になりますね。その間に2回辞めてます。実は、出勤初日から、「こりゃだめだ、ここにはいられない」と思いました(笑)。

もともと新卒では、外資系のメーカーに就職したのです。そこで4年くらい働いて、親の介護で辞めてから10年間、専業主婦をしていました。それが、子育てに行き詰って(苦笑)、このままみっちり家にいても、自分にとっても子どもにとっても良くないだろう、と働きに出ることに。で、たまたま理研のパート秘書の募集を見付け、家も近かったので応募したのです。

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当時は、理研ってなんだか全然知らなくて。それこそ、わかめスープを作っているんだと思っていました(笑)。でも、子どもも小学生と幼稚園でそんなに長時間働けないし、元の会社でも秘書職をやっていたということが、募集時の条件に合致したので、ごく軽い気持ちで受けたのですが、決まったとたんに私も職業婦人の意識がめばえ、しっかりやらなくちゃ、という気持ちにはなっていましたね。

ところが初日、あれ?なんだか雰囲気が違う?と、肌で感じて。どうも自分の思う会社や、社会の空気とは違う。これまでの社会経験も、最初の会社に4年だけなので限られたものだったのですが、研究室に入ってみると、私の知っている仕事に対する姿勢とは全然違う。そもそも、これはいわゆる営利企業で言う仕事ではないのではないか?と、思っていました。

それで、これはとんだミスマッチだ、と、感じて。企業と研究所、どちらが良いとか悪いとかではないのだけど、研究室にとっても、私は望むような人材ではないだろうし、自分自身が仕事としてのやりがいを見出せるのか、ということにも、最初から不安を感じていました。でも、募集広告を出して、面接をして、少なくともお金をかけて採用して頂いたわけだから、せめて1年は働くことが社会人としての勤めだろうと考え、なんとかがんばることにしたのです。

外資系企業での勤務経験しかなかった私にとっては、ものすごいカルチャーショックだったのですが、こういう世界があるということを知らずに終わらなかったのは良かったかな、と思います。

― 1年半働かれたのち、1度お辞めになられたのですか?

はい、義理の母の介護をすることになって退職したのですが、いずれまたどこかで仕事をすることにはなるだろうけど、私の人生で、2度と理研に関わることはないだろう、とその時は思いましたね。

「男女共同参画シンポジウムと、理事との出会い」

ところが2ヶ月くらいたって、理研でシンポジウムを開催するので、その事務局秘書を探している。3ヶ月の短期の仕事なのだけど、どうですか?という話があって。それが今の仕事との最初のご縁で、男女共同参画のシンポジウムだったのです。もう私は理研には関わることはない!と思っていたし、週2,3日、午前中2時間くらいしか働けないと思ったのですが、それでも良いですよ、と言われお受けすることになりました。

この頃は、全てが限られた時間の中でやりくりをしていたので、本当に忙しかった。どれだけ働いても終わらないのでは・・・と思うくらいに。日中一度子どもを迎えにいって、また理研に戻って、夕飯を食べさせに家に帰って、その後再び理研に…なんてこともありました。まぁ、子どもたちもこの時はかなり成長しましたね(笑)。

事務局秘書にプラスして、シンポジウムが終わるまでの3ヶ月間、研究室秘書も兼務していました。

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― 週2日、3日、午前中どころじゃないですね。

本当、そうですよ。まぁ、秘書のほうはともかく、シンポジウムが大変で。そんな感じで、3ヶ月めまぐるしく働いて…シンポジウム前日の夜中には、自分の車に看板積んで理研の中に立てて回ってね。もう、私、何やってるんだろう、と、思ったけど、動けるのは自分1人しかいないし、とにかくやらなきゃ、と。

それでも最終的にはいろんな方々のご協力を得て、なんとか100人くらいのシンポジウムが無事終わりました。そのシンポジウムが、理事(前男女共同参画推進委員会委員長)との出会いです。理事が、シンポジウムで挨拶されることになっていたので、こういう企画ですと事前にご挨拶にいきました。その時は、午前中しかいられないけど、と仰っていたのですが、結局最後までいてくださって、様々な話を聞いて、色々考えさせられたとおっしゃってくださいました。

  • 企画責任者

    kodera

    小寺千絵

    生物科学専攻博士課程

    いわゆるパン酵母を相手に、細胞内の物質輸送の研究をしています。生きているってどういうことなんだろう?と常々考えつつ、生き物たちの美しさに魅せられています。

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    • 大塚蔵嵩
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