奈良県立畝傍高校訪問記

講師 増田功 (医学系研究科国際保健学専攻 D2)

畝傍写真1

進化について話す増田さん

 
畝傍写真2

大学生の生活について紹介中

 
畝傍写真3

「実験をやるときは真剣ですよ」

 

 私は平成22年2月1日・2日の2日間、母校である奈良県立畝傍高校で出張授業を行いました。総合学習の時間に行われる選択授業の1つに設定していただき、2日間で合計100名の1・2年生が私の授業を聞いてくれました。
 そもそも私がBAPに参加したのは、生物学の面白さを他の人たちに、できることなら将来への可能性に満ちている高校生たちに伝えたい、と思ったからです。さらに自分の高校時代を思い出してみると、もちろん進路指導の時間は設けられてはいましたが、大学と大学生について具体的な像を描く情報があまりない状態だったことに気付きました。そこで私は、母校の後輩たちに生物学の面白さを知ってもらい、さらに大学生活・研究生活についての生きた情報を伝えることで大学に対する具体的なビジョンと夢を持ってもらいたいと思い、BAPの協力のもとに今回の出張授業を行いました。

 私の研究の対象は細胞の中のエネルギー工場「ミトコンドリア」であり、進化学の要素も取り入れ、微生物の進化と多様性に関連付けて研究を続けています。私がミトコンドリアに興味を持った理由は、細胞が餌として他の細胞に取り込まれ、その後消化されることなく定着した「細胞内共生」というダイナミックなイベントによって生まれた、という誕生秘話を知ったことです。今回の講義では、前半でミトコンドリアのはたらきについて説明した後、生命の進化とその中でのミトコンドリアの誕生を解説しました。そして後半では大学生・大学院生の生活や、自分の実験中の写真を交えた「生の研究生活」を紹介しました。
 これは少し反省すべき点ですが、前半はやや勉強の要素が強く、文系の生徒には少し難しかったようでした。しかし後半は写真も多く、数年後に足を踏み入れる大学の世界の様子に、皆が目を輝かせて見入ってくれていたように思います。目にする機会の少ないであろう実験室の中や実験の様子などは、生徒たちの目に新鮮に映ったのではないかと思います。実験を交えることができないので65分×2コマの長丁場を講義+質疑だけで過ごしましたが、皆さん最後までしっかりと聞いてくれました。終了後のアンケートでも「細胞ってすごいと思った」「生物に興味をもてた」「早く大学生になりたいと思った」という声をたくさんいただき、久しぶりの母校の空気に包まれながら、これまでに味わったことのない達成感を得ることができました。今回の経験は私自身にとっても貴重な経験となり、またプレゼンテーションを構成する上でも大いに勉強になりました。私たちの活動から、1人でも多くの高校生たちが科学に興味を持ってくれればこれ以上の喜びはありません。