学習院女子中等科訪問記
講師 中島和歌子 (人文社会系研究科基礎文化研究専攻 D1)
授業開始。先生から講師紹介
トリスケルとの出会いについて語る中島さん
自身の研究内容について語る中島さん
私はBAPのポスターを目にし、大学院生が母校で研究内容を紹介するという活動内容に大いに惹かれて講師に応募しました。自分の専門分野が「宗教学」という学問であるため、「はたして高校で『宗教』についての話をさせていただくことができるのだろうか?」という思いも実のところありましたが、これは自分の研究を発表させていただくのみにとどまらず、宗教学という分野そのものを広く社会に提示できる絶好の機会だと考え、挑戦させていただくことにしました。
幸い、母校の先生方とご相談させていただき、中学2年生の1学年(なんと約200人)を対象に、「道徳」の授業枠で出張授業を実施できることになりました(BAPの活動対象は基本的に高校生ですので、例外的な事例となりました)。大学院での研究がどのようなものなのかイメージを持たず、宗教学という言葉をこれまで聞いたことがないと思われる生徒―中2のときの私がそうだったように―を相手に、いかにわかりやすく、おもしろく、そして平易でありながら正しい内容の話をするのか。以上の点に注意して構成を行いました。BAPの練習会で他分野専攻の方からいくつかの指摘を受けて、再度内容を吟味したうえで当日に臨みましたが、このリハーサルを経ていたおかげで、話の筋が明瞭になったのに加えて、大人数相手でも落ち着いて喋ることができたのではと思います。
40分の授業の前半では「宗教学」がどのような学問なのか、その立場や基本的な考え方を説明してから、宗教に関係するものは意外と身の回りにたくさんある、という事例をいくつか紹介しました。後半では、私が取り組んでいるテーマ「渦巻模様と宗教性の関係」について、近代ブルターニュの例を解説し、最後に大学院生の生活(論文、学会など)についても触れました。渦巻模様の話ということもあり、図版を多く使い、目で見ても楽しい授業になるよう留意しつつ「なぜ?と思ったことについて積極的に検討して解明することの魅力」を伝えられるようにと心がけました。
授業終了後にアンケートを拝見したところ、「自分の興味を持ったことを大学院で研究するのは楽しそうだと思った」「私も好きなことを見つけて調べてみたい」「宗教のことが身近に感じられた」など、甲斐があったと心から思える言葉が並んでおり、とても有難いと感じました。同時に、内容についての鋭い着眼点や質問も多々あったので、かえって刺激を受けた面もあり、今後の研究に向けてたくさんの励ましを頂いたような気がします。
最後になりますが、後輩の皆様がそれぞれ関心のあるものをこれからたくさん見つけ、そしていつか「これを究めたい!」と思えるものに出会ったとき、悩みながらもそれを乗り越え、積極的に挑戦していくことを願っています。